認知症の備え
認知症の備え
落とし穴 3
「お母様名義のまま」にして、
認知症の備えをしない
自然な判断の中に、見落とされる時限爆弾
お母様が、長年住み続けてきた実家。
だから、名義はお母様のまま。
これは、ごく自然な判断です。
家族として、
何の違和感もない選択だと思います。
でも、ここに見落とされやすい、
ひとつの大きなリスクがあります。
それは、認知症です。
認知症になると、何が起こるのか
医学的なお話は専門の先生にお任せしますが、
不動産の手続きの観点では、こうなります。
お母様が認知症と診断され、
判断能力が失われると
不動産の売却・賃貸の契約が、
法律上できなくなる。
これは「契約には、本人の意思能力が必要」という、
民法の基本原則によるものです。
つまり、
「お母さんが施設に入ることになったから、
空いた実家を売って施設の費用に充てよう」
「もう住む人もいないから、
賃貸に出して家賃収入を得よう」
こういったごく当たり前の判断が、
できなくなります。
では、どうするのか
ひとつの方法として、
「成年後見人」という制度があります。
家庭裁判所に申し立てをして、
お母様の代わりに財産管理をする人(後見人)を
選任してもらう仕組みです。
ただ、現場で見ていて、
ご家族にとってこの制度は、
決して使いやすいものではありません。
現場で感じる、成年後見人の難しさ:
✓ 申立てから選任まで、数ヶ月かかる(売却を急ぐ場合に間に合わない)
✓ 後見人が家庭裁判所の管理下に入る(自由に売買を決められない)
✓ 後見人への月額報酬が発生する場合がある
✓ 一度始めると、お母様が亡くなるまで続く(中断できない)
「売却したい時に、すぐ売れない」
「家族の判断だけでは、動けなくなる」
これが、
認知症になってから慌てる方が直面する、現実です。
「家族信託」という、もう一つの選択肢
ここからは、宅建士の私が立ち入れない領域ですので、
司法書士の先生のご専門として、概要だけお伝えします。
家族信託という制度があります。
お母様がお元気なうちに契約を結んでおけば、
もし認知症になられても、
あらかじめ決めておいたお子さんが、
不動産の管理や売却を代わりにできる
という仕組みです。
成年後見人と違って、
家庭裁判所の管理下に入らないので、
ご家族の判断で、柔軟に動けるケースが多いと聞きます。
ただし、
契約の設計には、
司法書士の先生の専門知識が必要
信託契約は、お母様がお元気で、
判断能力があるうちにしか結べない
この2点が、決定的に重要です。
詳しくは、
必ず司法書士の先生にご相談ください。
弊社からも、
信頼できる先生をご紹介できます。
現場で見てきた、本当の話
弊社にいらしたお客様の話です。
「もう少し早く、知っていれば良かった」
ご相談に来られた時、
お母様はすでに認知症が進んでおられました。
施設費用のために、
空き家になった実家を売却したい
でも、契約ができない。
成年後見人をつけることになり、
申立てから選任まで数ヶ月かかり、
その間も施設費用は出ていく。
ご家族の負担は、想像以上のものでした。
「家族信託という言葉は聞いたことがあったけれど、
まだ先のことだと思っていた」
これが、ご家族の率直なお気持ちでした。
認知症は、ある日突然始まるものではありません。
でも、気づいた時には、もう契約能力がない、
ということもあります。
落とし穴を避けるための、原則
✓ 親がお元気なうちに「もしもの時、どうするか」を家族で話しておく
✓ 必要に応じて、家族信託を検討する
✓ 司法書士の先生の話を、一度聞いてみる
「まだ元気だから、まだ早い」
この感覚が、いちばんの落とし穴です。
家族信託も成年後見人も、
お母様の判断能力があるうちにしか、
自由に選べません。
「親が元気なうちにしか、この準備はできない」
これは、現場で見てきて、本当にそう思うことです。
「縁起でもない話」を、避けないでほしい
「親に、こんな話、できない」
「縁起でもない」
「元気なうちは、考えたくない」
そのお気持ちは、本当によく分かります。
でも、私が30年以上、
相続のご相談を受けてきて、いちばん辛いのは、
「あの時、話しておけば良かった」
というお声でした。
話すこと自体は、難しくありません。
「もし、お母さんが将来、
自分で判断できなくなった時のこと、考えておこうか」
たった一言です。
その一言があるか、
ないかで、ご家族の未来は、大きく変わります。
弊社にできること
弊社では、
相続のご相談をいただいた時、
まず以下をうかがいます。
✓ 親御様の現在の健康状態と、お住まいの状況
✓ 将来、不動産を売却する可能性があるか
✓ ご家族の中で、誰が中心になって動かれるか
その上で、司法書士の先生をご紹介し、
家族信託などのご相談に橋渡しします。
「不動産屋だけで判断しないこと」
これが、相続のご相談を本気で受けるための、
最低限のルールだと考えています。
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