相続不動産の活用法
2025年04月20日
相続不動産の活用法
こどもに負担をかけない不動産の残し方
「子どもに迷惑をかけたくない」
「せっかくの財産が負担にならないようにしたい」
このような言葉を、相続に関するご相談の際によくお聞きします。
実際、準備なく不動産を相続すると、相続税の負担、維持管理の手間、
売却の難しさなど、様々な問題が発生することがあります。
今日は、大切な資産である不動産を、
子どもや家族に負担をかけずに引き継ぐための方法について、
実例を交えながらお伝えします。
「実家を相続して困った...」
よくある相続不動産の問題
ケース1:古い実家を相続したAさんの場合
65歳のAさんは、母親の他界により築50年の実家を相続しました。
しかし、自分自身も別の持ち家に住んでおり、実家は空き家に。
固定資産税の負担、定期的なメンテナンス、防犯対策など、様々な管理問題に直面。
売却しようにも、古い木造家屋のため買い手がつかず、
解体費用も300万円以上かかると言われ困惑しています。
ケース2:複数の子どもで不動産を共有相続したBさん家族の場合
Bさんと兄弟3人で父親の資産(実家と賃貸アパート)を共有名義で相続。
しかし、管理や活用方法をめぐって兄弟間で意見が分かれ、
意思決定ができない状態に。
賃貸収入の分配方法や修繕費用の負担割合などでも対立が生じ、
家族関係にまで亀裂が入ってしまいました。
ケース3:相続税の支払いに苦労したCさんの場合
都心に不動産を所有していた父親から相続したCさん。
評価額が高額だったため、相続税が4,000万円以上発生。
しかし、現金資産は少なく、納税資金の工面に苦労。
結局、相続した不動産の一部を急いで売却することになり、
本来の価値よりも低い金額での売却を余儀なくされました。
子どもに負担をかけないための5つの対策
これらの問題を未然に防ぐための対策をご紹介します。
対策1:生前から計画的な不動産の整理・活用を始める
成功事例: 70歳のD様は、自宅と地方の別荘、
さらに投資用マンションを所有していました。
子どもたちの将来の負担を考え、
75歳になるまでに財産整理を完了させる計画を立案。
まず利用頻度が減った別荘を売却し、
投資用マンションは子どもが住む可能性のある都心部のものだけを
残して整理しました。
ポイント:
60代〜70代のうちに、所有不動産の棚卸しを行う
「今後10年間で実際に使うか」を基準に判断する
維持費や将来的な修繕費も含めて総合的に判断する
対策2:不動産の共有を避け、生前贈与や遺言で分割を明確にする
成功事例: E様は複数の不動産を所有していましたが、
子どもが3人いたため、将来のトラブルを避けるために、
生前に不動産の分割方法を明確にした公正証書遺言を作成。
現金資産とのバランスも考慮し、
不動産は資産価値と子どもたちの居住地を考慮して割り当てを決めました。
結果、相続時にスムーズな資産移転が実現しました。
ポイント:
不動産の共有名義は原則として避ける
公正証書遺言で分割方法を明確に指定する
「誰が何を相続するか」具体的に記載する
対策3:相続税対策を計画的に行う
成功事例: F様は都心に複数の不動産を所有し、
相続税が高額になることが予想されました。
税理士と相談し、生前に子どもや孫への贈与を計画的に実施。
さらに賃貸用不動産について収益性を高めるリノベーションを行い、
相続税評価額と実勢価格のバランスを最適化。
結果、相続発生時の納税資金の問題を大幅に軽減できました。
ポイント:
相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)を念頭に置く
生前贈与(年間110万円の基礎控除)を計画的に活用する
不動産の有効活用で、評価額と収益性のバランスを取る
対策4:信託や家族信託の活用を検討する
成功事例: 認知症の心配があったG様は、
所有する賃貸アパート3棟の管理を長男に任せるため家族信託を設定。
G様は受益者として家賃収入を受け取りながらも、
財産管理は長男が行える体制を構築。
認知症になった後も、不動産の管理や運用がスムーズに継続でき、
将来の相続もシンプルになりました。
ポイント:
財産管理と収益受取りの分離ができる
認知症対策として有効
将来の相続手続きも簡略化できる
対策5:不動産を売却し、管理しやすい資産に組み換える
成功事例: 75歳のH様は、地方の実家と都心の賃貸アパートを所有していましたが、
管理の負担と相続時の子どもの負担を考慮し、両方を売却。
得た資金を、管理の手間がかからず分割も容易な金融資産に変換しました。
子どもたちからは「将来の心配が減った」と感謝されています。
ポイント:
維持管理が難しい不動産は、思い切って売却を検討
売却益は、分割しやすい資産に変換
不動産の「思い出」と「資産価値」は分けて考える
不動産の「出口戦略」を考える重要性
不動産を所有する多くの方が見落としがちなのが「出口戦略」です。
購入や取得には熱心でも、将来誰がどうやって管理・処分するかまで
考えている方は少ないのが現状です。
特に重要なのは以下の3つの視点です:
1. 時間軸を設定する
「いつまでに・誰に・どのように」引き継ぐか、
具体的な時間軸を設定しましょう。
例:「75歳までに資産整理を完了させる」
「80歳になる前に遺言執行者を決めておく」
2. 相続人の状況を考慮する
子どもの居住地、職業、家族構成などを考慮し、
実際に活用できる不動産かどうかを判断することが大切です。
例:「子どもは海外在住で日本に戻る予定がない」
「子どもは既に持ち家があり、別の不動産は管理負担になる」
3. 「思い出」と「資産」を分けて考える
実家への思い入れは大切ですが、それと資産としての価値は別物です。
思い出は写真や動画で残し、
資産としては最適な判断をすることも必要です。
まずは「不動産の棚卸し」から始めましょう
相続対策の第一歩は、現在所有している不動産の棚卸しです。
以下の点を明確にしてみましょう:
所有不動産のリストアップ
所在地、面積、購入時期、現在の評価額
固定資産税納税通知書で確認できます
収支状況の確認
賃貸中なら家賃収入
固定資産税、管理費、修繕費などの支出
今後必要になる大規模修繕の予測
将来の活用可能性の検討
子どもが住む可能性はあるか
賃貸として活用できるか
売却するならいつがベストか
棚卸しができたら、不動産の専門家や税理士などの専門家に相談し、
具体的な対策を立てていくことをお勧めします。
お子さまも交えた家族会議で、方向性を共有することが大切
最後に強調したいのは、
相続対策は「家族全員で考える課題」だということです。
親の一方的な判断だけでなく、
子どもたちの意向も確認しながら進めることで、
将来のトラブルを未然に防ぐことができます。
「こんな不動産なら相続したい」「この不動産は正直負担に感じる」など、
率直な意見交換ができる環境づくりが重要です。
相続は単なる資産の移転ではなく、
これまでの家族の歴史や思いも一緒に引き継ぐ大切な機会です。
しかし、それが負担になってはいけません。
適切な準備と計画で、次の世代に「感謝される相続」を実現しましょう。
不動産の相続対策でお悩みの方は、ぜひ当社にご相談ください。
これまでの経験を活かし、お客様の状況に合った最適な提案をさせていただきます。
次回は「不動産売却のベストタイミング:見極めるための3つの指標」
についてお伝えします。
お楽しみに!